蘭麝酒とは | 青木蘭麝堂

about

戦国大名朝倉氏によって繁栄した一乗谷朝倉氏遺跡のほど近く。朝倉家ゆかりの健康酒として現在に伝えられているお酒が蘭麝酒です。日本各地には古くから伝わる伝統薬が数々存在していますが、蘭麝酒も長い歴史に育まれ守られてきた伝統薬の一つとして文藝春秋(2010年季刊冬号)に紹介されました。明治時代や大正時代には、北海道開拓団の人などに広く飲まれていました。数百年に亘り人びとの健康な生活を支え、今も愛され続ける伝統の健康酒です。

蘭麝酒
蘭麝酒グラス

蘭麝酒について

橋本 竹二郎

本酒は、遠く戦国のころ、越前の国一乗谷に百有余年の栄華を誇った朝倉氏の英主敏景公ゆかりの青木蘭麝堂祖先が創製し、奈良東大寺に、聖武天皇が愛用されたとして伝えたという名香「蘭奢待」に因み、「蘭麝酒」と名付けられたといわれています。蘭麝とは、蘭の花と麝香との香りです。

それ以来、朝倉氏一門の健康増進と氏族繁栄の滋潤の霊酒として珍重され、四百数十年を経た今日まで、一子相伝の家伝酒として、その秘方は厳に変わりなく継承されています。

この伝説的歴史を持つ蘭麝酒は、心のたかぶりを押さえ、平常心を保ち、久しく飲用することにより尚一層の健康保持に役立つ美酒ゆえといえましょう。

古き良き代の滋養と健康を今日に贈る蘭麝酒は、明治天皇の侍医岩佐純先生によって、高く評価され、世に広く紹介されました。

筆者略歴

昭和6年、東京生まれ/元富山大学薬学部和漢薬研究所薬草園長/元株式会社和漢薬研究所赤城薬園生薬研究室長

蘭麝酒グラス

青木蘭麝堂のこだわり

青木蘭麝堂では、昔からの和釜と甑(こしき)での製法を忠実に守り、手づくりの温もりを感じる薬味酒づくりを心がけています。主原料となるもち米は、自家産の東郷米を使用。精米から醸造の全行程において、人の手を介して丁寧につくっています。そのため、大量生産はできませんが、安全・安心で唯一無二のおいしいお酒をお届けするために、伝統を守りながら、日々研鑽を重ねています。

江戸時代に建造された当家の酒蔵の床には、『福井県の石』である淡い青色の笏谷(しゃくだに)石が敷き詰められています。その柔らかな感触と美しい色合いが特徴の笏谷石は、現在では採掘されていない幻の石とされています。この石の床が、青木蘭麝堂の長い酒造りの歴史をしずかに見つめてきました。

蘭麝酒の歴史を語る上で欠かせないのが、人の絆と輪です。蘭麝酒は一子相伝として品質の保持と次世代への継承が守られてきましたが、絶えることなく長い歴史を歩んでこれた背景には、“人”との結びつきがありました。酒造りに家族だけでなく近隣の方々の協力があったこと、古くから地元の人びとが蘭麝酒をまるで宝物のように大切に飲んでくださったこと。皆さんに支えられて、蘭麝酒の歴史は守られてきました。

長年ご愛飲いただいているお客様から「おかげで元気に過ごしています」といわれることが私どもの何よりの励みとなっています。歴史と人が育み、じっくり醸しだされた深い味わいを是非お楽しみいただきたいと思います。